StyleNorwayWebMagazine 【スタイルノルウェー】

中村孝則

Takanori Nakamura
コラムニスト。1964年葉山生まれ。
ファションやグルメ、旅やワイン&リカーなど、
「ラグジュアリー・ライフ」をテーマに、
新聞や雑誌、TVで活躍中。
現在、NHK BS1「地球テレビ エル・ムンド」
http://www.nhk.or.jp/elmundo/
火曜日レギュラー出演中。
http://www.takanori-nakamura.com

中村孝則

その重要な要因は、教育システムにある。ノルウェーが学校教育に力を入れているのは、良く知られている。ノルウェーでは、6歳から学校教育が始まる。小学校は日本より1年多い7年間、中学校は3年間で合計10年間が義務教育。そのさらに上の段階に、3年間の高等学校があり、ほとんどの生徒が進学している。大半が公立学校で、私立の学校に通う生徒が極わずかというのも特徴のひとつである。公立学校では教育費も教科書もすべて無料。しかも制服のある学校もないので、親の教育費にかかる負担が少ないことも、出生率の高さを支えている。しかし、それ以上に見逃せないことは、義務教育以前の問題。幼稚園の存在である。ノルウェーでは、すべての子どもの幼稚園への入園が、あとわずかで達成されようとしているという。このような制度の充実は、幼い子ども持つ両親が仕事に就くために不可欠であるとともに、ノルウェーがヨーロッパ諸国の中でも出生率が最も高い国のひとつになった生率が最も高い国のひとつになった主たる要因であることが、ノルウェー政府のデータでも示されている。

2008年、1〜5歳の幼稚園への通園率は87パーセントであった。2003年は69パーセントなので、子どもの通園率は確実に増え続けている。その理由は、2004年から親に対して最大限の手当が支給されるようになったためである。2003年から2009年にかけて、親が負担する費用は平均して公立幼稚園で20パーセント、私立幼稚園で28パーセント軽減されている。入園する園児の中でも、とりわけ3歳未満の子どもと少数派言語の子どもたちが大幅に増えているのも特徴である。2009年には、通園児童をさらに拡大する方策を講じ、1歳から5歳までの子どもの、幼稚園への入園を法で定めた権利としている。それにより、2008年には幼稚園施設の建設件数が過去最高を記録した。日本の政府や政治家も、本気で少子化対策に取り組むならば、なぜノルウェーの幼稚園対策を、もっと積極的に見習わないのか不思議でならない。ちなみに、現在、ノルウェーの政治家の関心は、幼稚園の数を増やすことよりも、どうすれば保育の質を高められるかという点に集まっているそうだ。

(ちなみに、このデータは、ノルウェー政府の「2009年幼稚園の質に関する白書」として発表されたものに基づいたものである )