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●イプセンの代表作 『人形の家』 1879年 Et Dukkehjem/A Doll’s House 『ペール・ギュント』 1867年 Peer Gynt/Peer Gynt 『野鴨』 1884年 Vildanden/The Wild Duck 一羽の「野鴨」が、登場人物たちの人間性の違いを象徴している。 |
注目される気鋭の演出家・
『幽霊』は1881年の発表当時、あまりにもスキャンダラスな内容で非難の嵐にさらされ、当時ノルウェーでは決して上演されなかった問題作。今では近代社会を象徴する傑作として高く評価されています。『幽霊』は、進歩的な考えを持っているにもかかわらず因習から抜け出せない女性、アルヴィング夫人の矛盾にさいなまされる姿を描いた三幕の家庭劇。聖書批判や性的なタブーに挑戦した傑作を、森さんはどのように演出するのでしょうか? 「主演の安蘭けいさんをはじめキャスティングは完璧です。安蘭さんは圧倒的に美しいアルヴィング夫人として舞台の全幕に登場し、セリフもかなりの量です。今作品では、幽霊、太陽、光…といった言葉が詩のように何重もの意味を持って発せられます。俳優たちは言葉の下にある不安、欲望、情熱などのイメージを深いところから探って口にしなければなりません。その言葉が観客にどのように伝わるか、そこが勝負のセリフ劇であることも見どころです。イプセンは暗く難解という印象もありますが、実は喜劇的でもあり、とりわけ『幽霊』での登場人物は皆、その場を取り繕うことに必死で、さらに深みにはまっていく。それはまさに現代の我々の姿でもあり、人間のありのままを見せることを目指しています。イプセンをあらためて読むと、巧妙な物語づくりの腕力に驚きます。どんでん返しが繰り返され、これでもかというほどクライマックスの山が連なり、どこまでも楽しませようとするエンタメ性に感服します。『幽霊』のラストもかなり劇的で、観る人に多彩で複雑な印象を与えるはずです。イプセンという通好みの作品をメジャーな劇場で上演できることを嬉しく思いますし、イプセンは初めてという人にこそ、ぜひ観ていただきたいです」。現代の感性が読み解く古典がどんな舞台を展開させるのか、大いに期待が高まります。 |
◎森 新太郎(もり・しんたろう) 演出家。1976年東京都出身。演劇集団円、会員。2006年『ロンサム・ウェスト』で本公演デビュー。08年『田中さんの青空』、『孤独から一番遠い場所』の演出で毎日芸術賞演劇部門千田是也賞受賞。09年『コネマラの骸骨』で文化庁芸術祭賞優秀賞受賞。今年2月には『汚れた手』『エドワード二世』で第21回読売演劇賞の大賞・最優秀演出家賞を受賞。テキストに真っ向から対峙し、緻密に芝居を立ち上げる手腕が高く評価されている。くちばしを使ってまで何とか生きようとする」と語っています。人間はどれだけ「真実」に耐え得るのか、暗喩に満ちた象徴的写実の技巧で描かれた傑作です。 |
◎安蘭 けい(あらん・けい) 1991年宝塚歌劇団に首席で入団。同年『ベルサイユのばら』で初舞台。06年星組男役トップに就任、09年に退団。10年に第1回岩谷時子賞激励賞、13年に『サンセット大通り』、『アリス・イン・ワンダーランド』の演技により第38回菊田一夫演劇賞を受賞。今年6月にはビリー・ホリディをモデルにしたソロミュージカル『レディ・デイ』がDDD青山クロスシアターで予定されている。 |
シアターコクーンで上演されるイプセンの最高傑作を、お見逃しなく! 『幽霊』 作 : イプセン/出 :演 森 新太郎/出演 : 安蘭 けい、忍成 修吾、吉見 一豊、松岡 茉優、阿藤 快
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