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東京・世田谷区の閑静な住宅街に、優しいラヴェンダー色の外壁に囲まれた「東北沢ききょう保育園」があります。今年4月に開園し、0~5歳児まで現在90名ほどが元気に過ごしています。園内は自然な色の木を活かしたシンプルな内装がほどこされ、過度な装飾はなく、心地よい空間が広がっています。庭に面した1階中央に食堂があり、おいしそうな香りが漂って、今まさにお昼ご飯の真っ最中。開園して2ヶ月足らずですが、みんな和気あいあい、楽しそうに食事をしています。食器は飾り気のない白の陶器、テーブルは白木、子供と保育士さんが座っている椅子はナチュラルカラーのトリップ トラップです。この椅子を採用したのは保育歴42年のベテラン園長の山田静子さん。ききょう保育園は町田市にもあり、こちらは1972年に開園、ここで1996年からトリップ トラップが使われ始めました。「この椅子との出逢いは20年ほど前。北欧へ保育の視察旅行の折、スウェーデンの保育園で使われているのを見て、即座にこれだと思いました。子供が姿勢よく、お行儀よく食べることを実現する椅子にやっと巡り合えたのです。私たちの保育園ではそれまで、子供が足を床に着けられずブラブラさせて動き回るので、足を乗せる箱や板を作っていました。足が着けば食べることに集中でき、きちんと人にも向かい合える。これはとても重要なことです。北欧で目にした後、日本で買えることを知り、園児とスタッフ用に70脚ほど購入して使い始めました。東北沢に開園する時もこの椅子を導入し、今、90脚近くを使っています。それぞれの子供の身体に合わせて座板と足のせ板の高さを調整でき、成長してもその都度調整できることも大きな利点ですね。自宅でも使っているという親御さんも少なからずいますよ」。“叱らず子供の育ちを見守り支える。保育園は家庭の延長線上にある”というこの保育園の理念が、この椅子を選んだ理由に繋がっています。この椅子をデザインしたピーター・オプスヴィックは、自分の幼い息子が快適に座れず苦労しているのを見てインスピレーションを得たといいます。そんなお父さんがいる国ノルウェーは、今年5月に発表された国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」による「お母さんに優しい国ランキング」で堂々の第1位に輝きました。日本のお母さんもお父さんも、この椅子に助けられ学ぶことはきっと大きいことでしょう。
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