StyleNorwayWebMagazine 【スタイルノルウェー】

 

ダイバーシティーとは多様性のこと。ビジネスにおいては性別や年齢、宗教や国籍を超えて多様な人材を登用することを意味します。
その中でも特に日本が必要とされているのは「女性の活用」だといわれます。

文=中村孝則 text by Takanori Nakamura 写真=津田孝二 photograph by Koji Tsuda

 

2012年11月2日。東京で「ノルウェー・日本 ビジネス テクノロジーフォーラム」が開催され、両国の結びつきをさらに深める、様々なイベントが行われました。中でも注目を集めたプログラムが、「労働力のダイバーシティー – 企業における女性の参加」をテーマにしたセミナーで、会場には多くの人が詰めかけました。周知の通り、ノルウェーは世界に先駆けてダイバーシティーにとりくみ、特に女性の労働参加を実現した経験と実績があります。一方、日本は先進国の中でも、もっともこの取り組みが遅れていると言われます。中でも企業における〝女性の活用〟に関しては早急な対応が迫られています。女性の活用を制度から促進する政策—時短勤務、産休、育児休暇の整備にとどまらず、企業内に女性を活用しようという積極的な風土やムードつくりも必要です。それには、ノルウェーの取り組みが、もっとも身近な参考例なのです。この日のパネリストは、ノルウェーからグン・オベセン(Gunn Ovesen)イノべーションノルウェー最高経営責任者や、マリアンネ・ハルグ(Marianne Harg)テクナ会長などが参加。ノルウェーのダイバーシティーの具体的な取り組みについて説明がありました。日本からは立教大学経営学部教授の尾崎俊哉氏がモデレータを努め、、日産自動車株式会社の代表取締役であり最高執行責任者の志賀俊之氏は企業の経営企画の立場で問題解決を探りました。今後、日本企業が生き馬の目を抜くような熾烈なグローバリゼーションの中で生き残るには、イノベーションによる競争力を高めるしか方法はありません。そのためにも女性の活用が急務であり、日本では多角的な取り組みを粘り強く進める必要があると、再認識されたセミナーとなりました。

会場には多くの人が詰めかけ、このテーマに寄せる関心の高さが伺えた。

左 : グン・オベセン(Gunn Ovesen)イノべーションノルウェー最高経営責任者。多くの企業のトップも経験している。
右 : マリアンネ・ハルグ(Marianne Harg)テクナ会長。テクナは6万人を抱えるエンジニアの利益団体。自らのダイバーシティー取り組みについて語った。

 

2012年4月。COMFORT HOTEL GRAND CENTRALという名のステーションホテルが、
オスロ中央駅施設内に誕生しました。コンセプトはその名の通り、コンフォート。駅に泊るという醍醐味以上の愉しさに溢れたホテルの誕生です。

文=中村孝則 text by Takanori Nakamura 写真=堀裕二 photograph by Yuji Hori

 

2006年から休業をしていた東京ステーションホテルが、6年におよぶ大改修を経て先ごろ営業を再開しました。東京ステーションホテルは、東京駅の施設の一部として1915年に開業。建物は国の重要文化財にも指定されていて、日本を代表するクラシックホテルと位置づけられています。江戸川乱歩の『怪人二十面相』や内田百閒の『阿房列車』が、このホテルを舞台としていることは有名です。川端康成や松本清張も同ホテルに滞在し執筆したといいますから、多くの作家たちにとって駅のホテルはインスピレーションの源になっていたのでしょう。さて、駅に泊るといえば、2012年4月にオスロ中央駅内に完成したステーションホテルCOMFORT HOTEL GRAND CENTRALが話題になっています。オスロ中央駅も歴史は古く、正式開業は1987年まで遡ります。現在も、ノルウェー国鉄の駅では最大規模を誇り、ドランメン線、ガーデエモン線、ホヴド線、ヨーヴィク線、エストフォル線各線の起終点となるターミナル駅でもあります。駅前は鉄道広場(Jernbanetorget)と呼ばれる大きな広場が広がりますが、その広場に面して作られたのが、このホテルです。筆者も、先ごろ滞在しましたが、正直いって駅ホテルのイメージをひっくり返されました。無線LANが無料で繋がる170の客室は、一部屋ずつ内装を変えモダンかつ遊びごころある内装で気持も軽快。中には、真っ黒やピンク一色で統一された部屋や、ウッドパネルだけの部屋、体操のつり革を備えた遊び心満点の部屋も。ロビーラウンジの一部は駅舎内にハミ出され旅の臨場感も満点。ロビーの入口には空港のビジネスラウンジよろしく、エアポート・エクスプレス・トレインの電光掲示板の時刻表まで配備され刻々と状況を伝えます。駅に泊るというゼイタクを、ウイットとしても味わったような気がしました。もっとも、これはオーナーであるPetter Stordalen氏の確信犯的な仕掛けでもあるようです。氏は、ノルウェーを代表するホテル王で資産家としても知られますが、彼は新聞のインタビューで同ホテルのコンセプトを、既存のイメージをはみ出したポップでファンキーなものに仕上げたかったと言っています。少なくとも、そのメッセージは滞在中に充分に伝わってきました。ちなみに、このホテルのメインダイニングは、イタリアンですが、朝食がすこぶる美味しいことも加えておきましょう。

 

◎Comfort Hotel Grand Central

ホテルのインテリアはMellbye ArkitekterとLars Hellingが手がけ、
アートビジュアルはAriel Mcmillionによるもの。
客室数170室 館内の無線LANは無料。ジムは24時間営業。
Jernbanetorget 1 , Østbanehallen 0154 Oslo, Norge
TEL+47 22 98 28 00 FAX+47 22 98 28 10