StyleNorwayWebMagazine 【スタイルノルウェー】

 

ダイバシティとは多様性のこと。
社会活動の場では、性別や年齢、人種や民族の違いに使われます。
中でも、いま世界中でテーマになっているのが女性の社会参画です。
その課題に先進国でも真っ先に取り組み、成果を上げている国がノルウェーです。
このコーナーでは、ノルウェーをはじめ、
さまざまなダイバシティの場で活躍するパネリストにご登場いただき、
その活動についてお伝えします。

文=山岸みすず text by Misuzu Yamagishi 写真=堀裕二 photograph by Yuji Hori

永田さんは大学を卒業後、日本たばこ産業(以下、JT)に就職し、今年で26年目。たばこの営業事務から始まり、医薬事業、人事部、食品事業など様々な部署を経験し、現在は飲料事業の責任者として約5000人の部下を率いています。女性では初めて社の制度を使って米国に留学、2008年には社内最年少で執行役員になり、女性初の、という冠をいくつも持つ人です。「子供の頃から男女共学で育ち、男女の能力差は体力ぐらいで他は平等と思って過ごしてきました。JTは男女平等の意識も高いフェアな会社ですが、まだ女性管理職は少ないのが現状です。その最大のネックは、女性は結婚出産といったライフイベントでキャリアを中断してしまうこと。その要因は、女性側が家庭の方を選んで会社を辞めてしまい、また会社側も仕事を続けやすい環境がまだ整備途中であることにあります。この現状で、一気にノルウェーのように、企業の取締役のうち女性は40%いなくてはならない、といった法律を作るのは難しいでしょう。日本ではまだ人財が育っていないからです。段階を踏んで人財を増やす必要があります」。そのためには、「日本の男性は、女性の部下に何かやらせて失敗した時、責任をとらせるわけにはいかない、といった過度な思いやりを持ち、それがまた新しい物事に挑戦させないための言い訳にもなっている。私は失敗させればいいし、それが将来の大きな成功の糧になると思っています」。5000人の大部隊を率いる永田さんの個性と仕事術とは。「私は機嫌がいい時はいいし悪い時は悪い、とてもわかりやすい人間。部下にとってもわかりやすい存在でいたいと思っています。5000人の部下がいても、右腕、左腕となるキーマンをきっちり押さえておけば、意思疎通は下まで流れていくものです。任せたら任せきる、これも大事です。今があるのは、泣きも笑いもしたけれど、与えられたことに逃げずに挑戦し、粘り強く結果をだしてきた成果だと考えます。運、巡り合わせ、仲間にも恵まれました」。これからもっと活躍したいと思っている女性に向けるメッセージをいただきました。「ひと昔前までは、女性も男性と肩を並べて勇ましく、という雰囲気でしたが、今は女性の特性を活かす時代です。外柔内剛、つまり外に対してはもの腰柔らかく、内では芯をしっかり貫き通す、というスタイルは日本の社会では有効な戦術でしょう。わからないことをわからない、といえる勇気も必要です。多くの女性は、今の自分となりたい自分を比べ、今の自分を否定しますが、ぜひ両方の自分を好きでいて欲しい。客観的にならないと自分を愛せないし、人も愛せません。人も自分も好きになればもっと輝けるはず。女性も男性もチャーミングでなければ。最後は結局”人間力”なんです」。すらりと背が高く、言葉はきびきびと明快、統率力と人を惹きつけるオーラを発しながら、まさにチャーミングで自然体。日本女性のそれぞれの個性が、確かにこの社会を多様に変えていく、その先端にいる人でした。

日本たばこ産業株式会社 執行役員 飲料事業部長。
早稲田大学第一文学部卒業。
1987年日本たばこ産業株式会社入社。
2001年食品事業本部 食品事業部商品統括部長、
2008年執行役員 食品事業本部飲料事業部長 兼 食品事業部商品統括部長を経て、
2010年6月より執行役員 飲料事業部長。
企業のダイバシティ・マネジメントの促進と支援を行うJ-Winの
エグゼクティブネットワーク(JEN)の幹事も努める。