あるものは力強く、前衛的。あるものは素朴で詩情にあふれ、シンプル&モダン。1940~1975年の“デザインが語りかけるノルウェー”を巡る17日間。 文=山岸みすず text by Misuzu Yamagishi |
この夏、東京はノルウェーのヴィンテージデザインの魅力発見に沸くこと必至です。日本はもちろん、世界でもまだ知られていないノルウェーのデザインが大挙して上陸し、ミッドセンチュリーのヴィンテージ家具やテーブルウェアを展示販売する展覧会が開かれ、人気が定着した北欧スタイルに新鮮なノルウェーデザインが加わります。ノルウェーの近代デザインは、ドイツのバウハウス運動の余波が1930年代にこの国にもたらされたことに始まります。それ以降、60年代までは家具から工芸品まで卓越したデザインを生み出していたものの、70年代に北海油田が開発され、国の財政が豊かになったことでデザインビジネスは衰退していきます。21世紀の今、忘れられていたノルウェーの1940~70年代の珠玉のデザインに着目し、国内外に発信し、価値を取り戻すべく開催されるのがNORWEGIAN ICONSと題するムーブメント&展覧会です。この活動を発案したのはオスロと東京で世界一のコーヒーを飲ませるカフェ、フグレン。1963年に開業したこのカフェは若手のオーナーに代替わりして以来、ノルウェーのヴィンテージデザインを全体コンセプトに、とびきり旨いコーヒー、価値ある古い家具、伝統的なカクテルを融合させたライフスタイルを発信。 |
フグレンのオーナーのひとりペッペ・トルルセン氏がノルウェーのヴィンテージデザインのエキスパート&収集家であることで今企画が生まれ、今年1月にオスロで開催された初の展覧会は予想以上の大盛況で大きな反響を呼びました。NORWEGIAN ICONSは東京での夏の開催後、11月にはニューヨークへと巡回し、早ければ今年中にフグレンの3店舗目がNYのブルックリンに開店する予定です。その存在そのものが“ノルウェーのデザイン史になった”といわれるフグレン。その快挙を成し遂げたオーナーのひとりで世界有数のバリスタでもあるアイナール・クレッぺ・ホルテ氏は、フグレンの成功の鍵をこう語ります。「情熱、好奇心、誠実さ。知識の共有、前向きな解決への意志。コーヒーも家具もカクテルも本物であること。なにより人を信じること」。ノルウェー語で鳥を意味するフグレン。おいしいものをついばみ、長い距離を旅する鳥に象徴される自由でオープンな雰囲気に満ちたカフェから生まれたノルウェージャン・アイコンズ。一国のデザインヒストリーを掘り起こすという価値ある冒険に、大注目です。
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Arne Korsmo, Planetveien 12 (1955) Foto : Teigens Fotoatelier / Eier : Dextra Photo |
Scandia Jr. Hove Møbler
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