StyleNorwayWebMagazine 【スタイルノルウェー】

 

ダイバシティとは多様性のこと。
社会活動の場では、性別や年齢、人種や民族の違いに使われます。
中でも、いま世界中でテーマになっているのが女性の社会参画です。
その課題に先進国でも真っ先に取り組み、成果を上げている国がノルウェーです。
このコーナーでは、ノルウェーをはじめ、
さまざまなダイバシティの場で活躍するパネリストにご登場いただき、
その活動についてお伝えします。

文=山岸みすず text by Misuzu Yamagishi 写真=堀裕二 photograph by Yuji Hori

私は団塊の世代の生まれで、大学までは大人数の中でもまれてバリバリに男女平等の中で育ちました。戦後の新しい風が日本にも吹いていたものの、いざ社会に出てみると、育児も介護も女がやるもので、賢い女は一歩下がって男を立てるといった古風な考えが跋扈し、男と同じように働けるという喧伝とはまったく異なる、ダブルスタンダードな世の中でした。仕事も育児も家庭もと、なぜ女性だけが大変なのか。当時私は、こんな世の中では誰も子供を産まなくなると叫びましたが、今、現実はその通りです。私自身は、すでに男性が座っているポストに自ら座ればよいと考え、歯科医になり参議院議員になりました。男勝りで損するタイプとも言われましたが、私は私の力で生きるしかない。こうして自力で達した者が、ガラスの天井でもがいている人を引き上げて底上げすればいいし、私以前にも先達となる女性はいました。しかし誰もがそうできるわけではない。ではどうしたら女性をもっと活躍させ、豊かで多様性のある社会を作れるのか。日本には革命は似合わない、というのが持論ですが、声高に要望を突き付けるより、法で決めた方がずっと実現が早いと考えます。日本は明治時代、坂の上の雲を追いかけて欧米の社会システムを導入し、法律を整備し近代国家となった国。法治国家として法律を根拠に社会が動く国ですから、ノルウェーのクオーター制(企業の女性役員の割合を40%以上にする制度)に倣い、数字を明示して導入するのもよしと考えます。そのシステムや法律作りにはもちろん国民の賛同と共感が絶対に必要です。そもそも女性をもっと活用すれば生産性も国力も上がるのは明白です。だから企業のトップや国会議員がまずは自覚的になり、長時間労働など生産性の低い働き方を正すべきです。一方、働き方を変えるためには男女ともに意識改革をし、ライフワークバランスを見直し、在宅勤務といった自由な働き方を選択するため交渉するなど、仕事と暮らし方をマネージメントできる能力も必要です。さらに具体的な提案としては、区市町村議会にもっと女性が参加すること。生活に密着した身近な問題を提議し解決できる場ですから、積極的に女性が議員になって欲しいですね。国家天下を論じなくても、こうした場で力を養った人が国政に出てくれば大いに活躍できるはずです。若い人への提言としては「自分を活かす生き方」をして欲しい。若い時に経験する辛さ、苦労、修行の中から生きる道を見いだし、自立して自分の人生をマネージメントできる力をつけてください。現実にはヒラリー・クリントンですらガラスの天井を感じ、フェイスブックのCOOのシェリル・サンドバーグというエリート中のエリートでさえ、女性の社会的地位の差別を訴えています。だからこそ普通の女性ひとりひとりが、サンドバーグがいうようにリーン・イン=勇気を持って一歩を踏み出すことが大事だと感じます。政治は結果責任の厳しい世界。自分のやりたいことに肉薄しどこまで成せるか。女性のみならず高齢者も社会的弱者も生きやすい社会は、男性にとってもいい社会なはず。それを多様性のある社会とし、そこに向かって好奇心の強さを武器に、私は全力を尽くしていきます。

参議院議員(自由民主党)、厚生労働委員長。
1949年山口県岩国市生まれ。鶴見大学歯学部卒業。
1980年広島市にみどり小児歯科クリニックを開設、
以来2006年まで当地で地域歯科医療に携わる。
2007年に参議院議員となり、現在2期目。
現在の役職は厚生労働委員長、
消費者問題に関する特別委員会委員。
社会保障政策を軸足に、
日本の将来を見つめてさまざまな問題に取り組んでいる。
http://www.ishii-midori.jp